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ドクター・チャンがナカジマに駆け寄った。
「気密は破れていないか」
「宇宙服が…」
ナカジマが指差したのは、宇宙服の腹の辺りだった。通信パックの周辺の被覆が破れ、インナーが見えている。ドクターは手に持っていた救急キット箱の中から、ガムテープのようなものを取り出し、宇宙服の裂け目を塞いだ。
「空気組成や気圧は問題ない。火傷も軽症だ。だが、病原体に感染した恐れがある。船に戻ってちゃんと調べないと」
ナカジマは納得いかない顔つきをしていたが、ドクターの形相に気押されし、小さく頷いた。
「ついてないな」
「バックアップ要員を送って下さい。ナカジマとマスチェラーノをチェンジします」
シェリルからの通信を聞き、マスチェラーノが小躍りした。
ゴダードを離れるまでの間、ナカジマは最後まで任務を果たそうと、旧式のコンピューターと格闘していた。情報ポートはさっきの漏電で融解してしまった。持ってきた高速通信ケーブルとの相性が悪いのかもしれない。無理につないで、データを損傷しては元も子もない。きちんと検証せずに、送信を試みたさっきの失敗はもう繰り返せない。ナカジマはデータ伝送の方法を思案していた。
「それにしても不思議です。なんであんなことになったのか」
ナカジマはコンソール下の金属パネルを開けて、中の基盤や配線を引っ張り出した。隣でシェリルがその作業を覗き込んでいた。
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