3.乗船

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3.乗船

 ハローに乗り込むべきか否か。ブリッジで再び論議が火を噴いた。 「直接乗り込むのは危険すぎる。せめてもう少し相手のことを理解してからの方が…」  中堅のクルーが口火を切った。 「しかし相手はまともに通信できないんだぞ。単語の遣りとりをしながら、このまま並んで飛ぶだけでファーストコンタクトとは情けない。乗り込めば、もっと多くの情報が得られる」 「エウロパからの援軍を待つべきだろう。単独行動はリスクが大きすぎる」 「スペース・ガード到着までに最短でも1年半かかる。それまで黙って並んでいるだけか」 「矢印を送信したのが、最後の通信デバイスだったのかもしれない。それが底を尽いたから、外部との連絡手段がなくなったんだ。向こうは困っている。乗船要請は救助信号と同じだと考えるべきだ」  やはり論議は尽きなかった。またしても決断は船長のウオルコットに委ねられた。いつの時代も、大事な決定は船長が下す。 「シェリルは直ちに乗船班を組織しろ。ナカジマはハローの内部スキャンだ。ここまで来て、もう遠慮はしていられない。だが、相手を刺激しないように気をつけるんだ。スキャン範囲はハロー内部の生命維持機能を中心にな」  モールス通信をしてきてから3時間が経過したが、その後ハローからは何のメッセージも送られてこなかった。2隻の宇宙船は、表面上仲良く並んで、秒速7・9キロでランデブー飛行を続けていた。 「船長、乗船班を組織しました」  シェリルはコンピューターパッドをウオルコットに手渡した。シェリル、ナカジマ、機関部のジョナサン、それにドクター・チャンの4人だった。相手の船まで移動するシャトルの定員は4人。増援が必要になった場合のバックアップメンバーも同じ数だけ選考されていた。選ばれた8人はいずれ劣らぬ優秀なクルーばかりだ。 「今回ばかりは、船長であることを悔しく思う」  ウオルコットはパッドをシェリルに返しながら言った。「乗船班のメンバーに選ばれたかったよ」  シェリルは小さくウインクした。
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