5.小さなトラブル

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5.小さなトラブル

 ナカジマは本能的に科学部のスペースに向かい、コンピューターを操作し始めたが、すぐに声を上げた。 「とても古いコンピューターです。量子技術以前のもので、処理速度が恐ろしく遅い。それに…ちょっと待って下さい」  ウオルコットの視線はスクリーンに投影されているナカジマのカメラ映像にくぎ付けになっていた。画面には小さな文字が浮かんでは消えている。弱音を漏らしながらもナカジマはデータベースへのアクセスに成功したようだ。 「かなりのデータですね。記憶容量は我々の船とは比べ物にならないくらい小さいですが、とても手の込んだ圧縮をしています。本来はデータを保存する場所じゃないところにも随分データが隠されています。見た目以上にたくさんの情報量があるかもしれません。いっそのこと丸ごとダウンロードして、うちの船で分析した方が早いんじゃないかと思います。ここのマシンだと、読み出すだけで時間がたっぷりかかります」 「ダウンロードはすぐにできるのか」 「訳ありません。750テラバイトのサーバーが48個連結されています。そのほかに小さな記憶装置にも恐らく100カ所くらいに少しずつ保存されています。でも転送は小1時間で終わると思います。マスチェラーノに準備するように言ってください」  ウオルコットが目をやると、マスチェラーノは親指を立てていた。 「準備完了のようだぞ。すぐに送ってくれ」 「了解しました」  ナカジマは宇宙服の通信パックから1本のコードを取り出し、ゴダードのコンピューターに接続した。 「うーん。旧式のコンピューターはよく分からないな…。たぶんこれでいいだろう」  ナカジマがコンピューターを何か操作した途端、つないでいだコードが火を噴いた。スクリーンが真っ白に輝いた。 「うわっ!」  ゴダードのブリッジ内に白煙が立ち込めた。ナカジマカメラの映像が乱れ、天井を映し出した。のけぞって、尻もちをついたのだ。その様子は白煙の中に垣間見える他のクルーの映像から何とか確認できた。 「どうした」
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