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冷蔵庫の中を探るが、犯罪者に生まれ変わった母親の無計画さが象徴されているため、どれも中途半端に余った食材で、利用価値がないに等しいことがわかる。
気が乗らないが、空腹に我慢できないので、外に出ることに決めた。
財布に手をつけようとしたその瞬間、何かの音が鳴って、びくりと飛び上がった。
電話のコールだ。
速報よりも遅く伝えることに抵抗がないであろう哀れな親との間に、これから行われる会話の内容が鮮明に想像できるため、居留守を使う。
財布を持ち直し、家を出てドアの鍵を閉める。金属特有の擦れ合う音に顔をしかめた。
振り返ると「あらまぁ。」と、隣に住むおばさんに声をかけられるが、無視。
自分が気に入らない不登校の子どもをみて、からかうためだけに走ってきたのだろう。コンクリートの地面には汗が滴り落ち、肩で息をしていて、たいへん滑稽な姿だ。
だが取り合う必要は皆無だ。いじめっ子の域を出られていない彼女の対応をして、いいことなどあるわけがない。
相手をしてくれない、と分かりやすく顔を不機嫌にするおばさんを置いて安アパートの階段を下る。
一歩一歩丁寧に。足元を見ながら前に進む。正面などを見れるはずもなく。
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