2045年7月 東京

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2045年7月 東京

黒スーツに連れられて辿り着いたのは、無機質な部屋だった。 歓迎する気など全くない。そこは、ただ人を苛めるためだけの部屋だ。 周囲を見まわしながら、アオはそう思った。 パイプ椅子に座れと言われた。 前には事務机が置かれていて、それを挟んで黒いスーツを着た、表情のない中年の男が座っていた。 感情のない眼がアオを睨みつけている。 「改めてホンジョウ アオ君だね。かつてのシロダの右腕。現在は大学の準教授にして、ナノマシン研究の専門家だ。……いくつか君に質問をさせてもらう」 黒スーツが淡々と言う。 その遠慮のない無礼さに、なによりあの人の名前を粗雑に呼び捨てるしぐさに、アオは腹をたてた。 「自己紹介もなしに、いきなり質問ですか」 アオは憤りを顔に出しながら言う。 「自己紹介は立場上できない」 黒スーツはアオの不機嫌を気にもせずに告げて、 「君は今日、横浜の山下公園で奇妙な行動をとったね。あれは何だったのかな?」 そんなことを淡々と続ける。 アオは黒スーツの正体を察していた。 警察公安部。 国家の犬の中でも、取り分け優秀で、取り分け忠順で、そして取り分け狡猾な連中だ。 国家の裏側にベットリと根を張り、国家の裏側を取り仕切っている。     
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