9人が本棚に入れています
本棚に追加
「時間が惜しい。質問に戻ろうか。山下公園で、君は何をしていたのかな?」
「別に何もしてませんよ」
アオはとぼける。
その様子に公安は嗤った。
「何もしてなくはないだろう」
そう言って公安は1枚のパソコンから出力された写真を見せつけられた。
証拠はすでに揃っているということだろう。
写真には山下公園で、灰色の海に向かって小箱を構えるアオの姿が、明確に写されていた。
写真を突き付けられて、アオはため息を漏らす。
「シロダ教授の弔いですよ。……もうすぐ教授の命日ですからね」
「では、この小箱は何だ?」
「だから弔いですよ。……そして償いです」
「償いだと?」
公安の睨みが強くなる。
アオは深呼吸して怒りを落ち着けた。
無機質な天井を見上げる。
「そう。償いですよ。……あなた方の言うとおり、僕はシロダ教授とともに夏を消し去ってしまった。それを償おうと、そういうことです」
「何をした?」
公安の言葉に、アオはクスッと笑った。
からっぽの微笑みだ。
「夏が消えたのと同じことです。夏を取り戻しただけ」
そこで男が一人、部屋に駆け込んできた。
男はチラリとアオを睨んだ後で、黒スーツの公安に何かを耳打ちする。
途端に公安の顔色が変わった。
最初のコメントを投稿しよう!