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この子は何を言っているんだろうか。
「思い出を食べる化け物ってこと?」
「失礼な、少女か天使か死神って言ってるじゃないですか!」
「えーっと、少女か天使か死神は人の思い出を食べるものなの?」
「そーみたいですね」
「自分のことだろ」
少女の言葉の適当さに呆れてしまう。
「でもでも、その代わりですね、タダでというのもあれなんで、もしも記憶を食べさせて下さったら、山田さんが死んだ暁には再び人間として生まれ変わらせてあげることを約束します!」
「もし思い出をお前にやらなかったら何に生まれ変わってるんだよ」
「んー。ダンゴムシとかそこらへんじゃないですかね」
「適当だな」
「まーまー、細かいことは気にしないで下さい」
「はあー、」
思わず大きなため息が出る。飛び降り自殺なんかしてしまったせいで俺の頭はおかしくなってしまったんだな。そうだ、そうに違いない。ならいっそのことこの少女の話を受け入れてしまおうか。俺が悪いんじゃない。ジメジメした暑さとこのあり得ない状況が悪いんだ。
「いいよ」
「本当ですか!思い出を食べるとその思い出を中心に記憶がなくなっていきますよ?」
「えっ、……うん、ああ大丈夫だ」
どうせ俺の思い出なんて大したものなんてないし。それをやるだけで人生をやり直せるのなら儲けものだ。
「で、どーやってあげたらいいんだ」
「はい!それはですね、その思い出を見て回っていくんですよ!」
「見て回る?」
「はい、言ってみたら自分の思い出を追体験?する感じですね」
おいおい、このつまらない人生をまた繰り返さなきゃいけないのか。
「安心してください。思い出を見て回るだけで、動く必要は全くないんで」
なんで考えてることわかるんだよ。
「そりゃ、天使ですからね!あれ、死神だっけ」
なんでもいいよ。
「ま、とりあえず私お腹減ってるんで早速思い出巡っていきましょう!」
少女がそう元気よく言うと、あたりの景色は真っ黒になっていった。
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