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徹君は時々葉書をくれた。
練習頑張ってるとか、夏子ちゃんも無理ない程度に頑張れとか書いてあった。
その葉書を宝物にして夏を夢見た。
雪で練習出来ないからと、一度だけお見舞いに来てくれた。
「どう? 身体の調子は?」
「変わらないね。」
「悪くはなってない… でしょ?」
相変わらず爽やかに笑う。
切り取られた青空を背に笑顔で言う。
「簡単に言うなぁ~。これでも落ち込んでるんだよ?」
「そう言うなよ。俺んとこもエースが不調で予選が心配だよ。 それでもさ、みんなで頑張るんだ。不調な人のカバーしながらね。」
「チームだもんね。 仲間、いいね。」
「夏子ちゃんもね。初めて名前聞いた時、縁起いいって思ったんだ。 夏子が夏を連れてくる。」
なんちゃって、と笑う。
「応援席に夏子ちゃんが居たら勝てる気がする。」
「ありがとう。頑張る。」
「練習あるからこれからはお見舞い来れないけど、手紙書くね。」
「葉書でしょう? 徹君の葉書、面白いからいいけどね。」
「面白い事を書いてるつもりはないけどね?」
2人で笑いあったこの日、強く思ったんだ。
絶対に応援席に行くんだって。
徹君が甲子園を目指して闘っている。
私も、私に出来る闘いをするのだと思えた。
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