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切り取られた青空には続きがあると知った。 切り取っているのは人で、空はいつでも広がっている。 教えてくれたのは徹君だ。 彼は驚くほどの明るさと前向きな考えで、卑屈な私を明るい方へ向けてくれる。 最近は月に一度は顔を出してくれる。 一緒に勉強する。 「新しいCD 出てたよ。」 「この曲も最近流行りだって、知ってた?」 「学校で女子が歌ってたな。学祭あるんだ。」 「楽しそう。」 「運動部は参加しないからなぁ。それに三年は受験一色だ。」 「進んでる? 勉強。」 「そう思いたい、けど思わない方が勉強は進むんだろうな。」 「焦ったら逆効果じゃない?」 「そっか。 夏子が受かって俺だけ落ちたら恥ずかしいなぁ。」 頭を抱えて言う。 ポジティブな彼にしては珍しい。いつしか呼び方も呼び捨てになった。 「退院決まりそうなんだ。」 「ほんと? 良かったなぁ。頑張ってたもんな。」 みんなあの日の君のおかげ。 君に会えた事が私のハッピーの始まり。 それはまだ、徹君には言えないけど、いつか伝えたい。 お礼の言葉を添えて。 「絶対、退院して、合格するからさ。徹君ももう一踏ん張り、一緒に頑張ろう?」 「そうだな。夏子は病気も勉強も二つも頑張っているのに、勉強だけの俺が負けるわけには行かないよな? もう一踏ん張り、頑張ろうな。」 手を繋いだ……初めて触れた。
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