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お節介な同級生からの合コンのお誘い。 他校生も居て、賑やかで楽しい。 「ここいい?」 「ああ…うん。どうぞ?」 何処かで見た気がする。 多分、同じ大学の子…誘った友人の方を見ると、目が合ってなぜかウインク。 「佐伯君、お酒は?」 「まだ19だよ。これはウーロン茶。」 畳の居酒屋で、足を崩して隣に座る彼女はふわふわしていて可愛らしい。 髪を後ろに持って行く姿にドキッとする。 「真面目だねぇ、少しくらい飲んでもいいのに…。」 くすくすと耳元で笑い声がした。 「飲んでる?」 「うん、あ、はたち、なったから。一昨日だけど…。」 「そうなんだ…おめでとう。何もないけど…。」 と返して、俺も笑う。 「ふふ…いらないよ?その代わり、来年、一緒に居てくれたら嬉しいかな?」 「えっ?」 斜めに顔を傾けて、彼女は俺の方に顔を置いた。 可愛らしい…彼女。 だけど、違う…違うんだ、俺の……相手とは違う。 来年の話さえ、しない人。 明日の約束さえ気にして、葉書一枚を喜ぶ人。 「君は……青い空みたいだね?」 出会った頃、俺を眩しそうに見ていた人。 彼女をゆっくりと離して謝った。 「ごめん、来年の事は分からない……。」 立ち上がり、友人に断りを入れて帰った。 後ろで友人に文句を言う彼女の事をちゃんと理解した。 好意は嬉しい…普通ならお付き合いくらいしているかもしれない。 どうしても比べてしまう。 あの暑い最期の夏の…絶望の中の青空。 夏子……あおはる、を教えてくれた相手。 それから、先輩の紹介、飲み会、強引なグループデート…。 周りのお節介もことごとく無駄に終わっていくと、回数は減っていった。 夏が来る。 夏子に会いたい気持ちが増した。
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