紅い

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少し遅いという事は分かっていた。 でも、挑戦しなければ分からない。 無駄に終わってもいい……去年の様に。 私はまた勉強を始めた。 もう一度、封印した参考書や問題集を出した。 新しい物も買って来てもらって、分からないところは印をつけて、 院内学級の先生の所に夕方お邪魔して、教えて頂いた。 院内学級の生徒でもない夏子に、先生も丁寧に親切に教えて下さった。 優しさは…いろんな所にあるのだと、知った。 この狭い空間で、自分は一人なのだと、決め付けて何もしないでいたのは自分だった。 目を開ければ、沢山の人がいて、そこには何でもないように見えて、沢山の悩みをそれぞれが抱えている。 人それぞれ、小さな悩みでも、本人には大きかったり、夏子でも驚く様な大きな悩みを抱えていたり…。 そんな人が暮らすという、当たり前の悩みも夏子は気付かずに来たのだ。 自分だけが不幸だと決めつけて…。 (徹くん、いつか、堂々と君に逢いに行きたい……。 沢山の事を、教えてくれた君に……。) 必死の勉強は続いていた。
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