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ぴんく
今日も彼は病棟に入るとナースセンターに挨拶。
廊下ですれ違う人に頭を下げながら小さな声で挨拶。
「おはようございます。」
移動する私の横を通り過ぎる。
「おはよう・・ございます。」
彼に聞こえたかどうかもわからない。
顔が熱くなる。
部屋に戻ると看護師さんが言う。
「なんだか今日は顔色が良いわ。ピンク色よ?頬紅をさしたみたい。」
可愛らしいと、つけ足してくれる。
お世辞でも嬉しい。
彼は些細な事で、私を私の知らない世界に連れて行ってくれる。
どこまでも続く広い青空の中で、彼は眩しいのだろうなぁと
想像する。
私の顔はピンク色になる。
彼は練習が終わってから母親の所に来る。
毎日顔を出す。
ここに来て彼の母親や、身の回りの事が気になりだす。
私は所詮、自分だけが大事な、くだらない人間なのだなと思うと自分が嫌になる。
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