ぴんく

1/5
106人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

ぴんく

今日も彼は病棟に入るとナースセンターに挨拶。 廊下ですれ違う人に頭を下げながら小さな声で挨拶。 「おはようございます。」 移動する私の横を通り過ぎる。     「おはよう・・ございます。」 彼に聞こえたかどうかもわからない。 顔が熱くなる。 部屋に戻ると看護師さんが言う。 「なんだか今日は顔色が良いわ。ピンク色よ?頬紅をさしたみたい。」 可愛らしいと、つけ足してくれる。 お世辞でも嬉しい。 彼は些細な事で、私を私の知らない世界に連れて行ってくれる。 どこまでも続く広い青空の中で、彼は眩しいのだろうなぁと 想像する。 私の顔はピンク色になる。 彼は練習が終わってから母親の所に来る。 毎日顔を出す。 ここに来て彼の母親や、身の回りの事が気になりだす。 私は所詮、自分だけが大事な、くだらない人間なのだなと思うと自分が嫌になる。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!