真夏の国からの旅人

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 氷が語り終えると、彼は笑って白い息を吐いた。 「あんたは素敵な物語に囲まれているんだな」  それから、ああ、と小さく叫んだ。 「あんたの名を知らなかった。俺はサイファ、故郷の言葉で『夏』という意味だ。氷の娘さん、あんたの名を教えてくれないか」  氷、と名乗るとサイファは笑いだした。 「夏と氷じゃ、俺とあんたは天敵だな」 「なぜ?」 「だって、夏は氷を溶かしちまう」  氷はすこし考え、違う、と言った。 「敵ではない。氷は、けっして知ることのできない夏に憧れている」 「そういうものか」  サイファは感銘を受けたらしく、翌日は彼の故郷の話をすると約束して、その日は眠りについた。
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