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最初はね、壮大にメロディーを響かせるの。伸ばすところはたっぷり、息を使って、レガートは腕を使って。わたしはいつも、この曲を演奏する時は心の中で歌ってる。楽譜にそう書いていなくっても、歌って、ペダルと共に踊ってリズムを足で刻む。
花のワルツといえばオーケストラの演奏だけど、ピアノだって出来るんだよ。例えば最初のハープの演奏ーーー弓の形をして、なめらかな音を奏でる弦楽器を再現するには、それなりの実力と、想像力が大切なんだ。
指で押すだけの鍵盤楽器に思えるけど、そうではない。だって、ヴァイオリンだって、弓で弦を擦るたけじゃ綺麗な音は出ないでしょ?
楽譜に速度記号や、強弱記号が書いていなくっても、そこに自分が想像したハープの音色を指で再現したら、オーケストラのコンサートは一人でも開けるんだ。
川の緩やかな流れのように、わたしの音はピアノを通じて響いて消える。乱暴じゃない。とっても小さな響き。それでもしっかりした十六分音符。
手首の力をすうっと抜いて、鍵盤に指を落とす、素敵な作業は、わたしだけの世界にある。
あぁ、なんて綺麗なピアニッシモ! これがワルツの始まりを表してくれる。
重く思われがちな低いレの音をペダルと一緒に鳴らして、装飾を付けるみたいにファとラを同時に二回。
俗に言う「ズンチャッチャ」のリズム。三拍子の踊りーーーワルツ。
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