花のピアノ・ワルツ

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 わたしが今使っているのはコンパクトサイズの電子ピアノ。グランドピアノや、アップライトピアノはハンマーというものがあって、それで弾いて音を出すのだけれど、電子ピアノは違う。鍵盤の下に音を出す機械があって、それがスピーカーを通じて奏でられる。  わたしの好きな白色のいいピアノだから嫌いじゃないけど、なんとも、わたしの求めている音は出ないんだ。電子ピアノっていうのはね、ロボットと同じで感情がないの。強弱はつけられるけど「ピアノの音色」を完全に表現するには難しいんだ。  グランドピアノは、一番低い音から一番高い音まで、音の想いを伝えることができるんだ。それを存分に活かせるのは、一流のピアニストだけだけどね。  曲想といって、曲の感じは、どんなピアノでも奏でられる。……でも、わたしの追いかけている素晴らしい音色とは違うんだよね。  ……ううん、文句は言わない。こうして電子ピアノで演奏できるのも幸せなことだもの。グランドピアノを触ってみたいだなんて夢のまた夢の話だよね!  ーーえみ、えみ!  空の向こうに鋭く響くような、きらきらとした声が、ピアノの音に混ざって、ワルツの音色を飾った。  わたしが今いる、おうちの中には、わたし以外誰もいない。お母さんとお父さんは出掛けているし、わたしのおうちは森の中にあるから、外で誰かが叫んだとも思えない。  でもわたしは夢中で花のワルツを歌っていた。  だって、わたしを呼んだのはピアノの音みたいだから。     
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