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この白い、グランドピアノに出会った時は夢みたい! って思ったけど、今、わたしに聞こえているワルツのリズムは、今までおうちで奏でてきた電子ピアノと同じみたいだわ。ということは、これはわたしだけのピアノの世界?
うん、そうだわ、きっとそう。
ずうっと探していたの、わたしだけの曲想を。花のワルツを作曲したチャイコフスキーのものでも、グランドピアノでしか表現できないものでもない、わたしが出せる音の想い?????何で今まで気付かなかったのだろう? 電子ピアノはロボットではないのね! 鍵盤の下に機械があっても、悲しい音、楽しい音を鳴らせるのね! 感動したわ。
お花畑の気分はこんな感じなのね。わたしったら、知らないうちに感じていたのか。
難しくって失敗してしまいそうな音を、感覚で掴んで、指で……ううん、体で響かせる。周囲のお客さんたちはごくりと唾を飲み込むように、わたしの方に身を乗り出した。
さて、いよいよ物語の終わりよ。寂しくなるけど、また物語は始まるからね!
最後の四小節。力強い「f f f《フォルテフォルテッシモ》」の記号に導かれて、わたしは髪の毛を振り乱して指を広げた。
言い忘れてたわ、物語を指揮するのは、最後の音も重要ね。
最後の音は、四分休符。五線譜の上に、しっかりと奏でてある。
力一杯、最後の最後のメロディーを響かせた後、二つの四分休符を味わって、膝に手を乗せる。
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