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水鳥川さんが色の薄い唇を開いた。
「わたしの席は、どこ?」
ガタ、とだれかがずっこけるのが分かった。
正直わたしも同じ心境だったけど、本人がいたって当然というようにきくものだから変なかんじ。
しばらく固まっていた先生が、気を取り直してわたしのとなりを指さす。
「小戸森のとなりが空いているから、その席にするか…」
水鳥川さんが分かったというように頷いて、わたしのとなりの席へやってきた。
きれいだけど、どこか近寄りがたさを感じさせる子。
スノープリンセス、という文字が頭の中に浮かんだ。
よし、ここは勇気を出して…。
「わたし、小戸森未希。転校生だったんだね。朝会ったの。覚えてる?」
「えっ、そうなの?」
前の席でさっちゃんが驚く。
水鳥川さんが何もしゃべらないので、わたしが答える。
「そうなの。今朝、あの洋館の前で…」
あ、いけない。
わたし、むぐっと自分の口を両手で覆った。
けれど、遅かった。
「洋館!?」
ざわっ。
再び、みんなの視線が水鳥川さんに集中する。
でも、それはさっきのような好奇の視線ではなかった。
変わり者に向けられる目。
誰かがこっそりとつぶやいた。
「ありえない」
相変わらず水鳥川さんは何でもないって顔をしてるけど、わたしは頭をかかえてしまった。
やっちゃった…。
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