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「はい…佐倉 時雨といいます…はい…この名刺を頂いて…はい…よろしくお願いします」
電話をしながら夜道を歩き、一人コンビニへと向かう。やはり、家に帰ってから電話をした方が良かった雨の音が、私の声をかき消していく。
電話を切り、連絡先を開く。
もう一つの電話は、さっきと違って何度もコールを鳴らした。
「もしもし…お父さん…?」
「なんだ。会社帰りか。ちゃんとやってるんだな…」
「あっ…の…」
「そういえば今日、G社の社長が夜逃げしたって聞いたぞ。お前はそんな人間になるなよ。」
「えっと…その会社…」
「なんだ」
「いえ…なんでもありません。お母さんによろしくお伝えください。」
「わかった。」
「ありがとうございます」
「あーあと時雨。この時間は忙しいからあまり電話しないでくれ。」
「わかりました。失礼しま…」
ガチャっ
家族なんて、所詮こんなものである。
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