第1章 よくある話

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「はい…佐倉 時雨といいます…はい…この名刺を頂いて…はい…よろしくお願いします」 電話をしながら夜道を歩き、一人コンビニへと向かう。やはり、家に帰ってから電話をした方が良かった雨の音が、私の声をかき消していく。 電話を切り、連絡先を開く。 もう一つの電話は、さっきと違って何度もコールを鳴らした。 「もしもし…お父さん…?」 「なんだ。会社帰りか。ちゃんとやってるんだな…」 「あっ…の…」 「そういえば今日、G社の社長が夜逃げしたって聞いたぞ。お前はそんな人間になるなよ。」 「えっと…その会社…」 「なんだ」 「いえ…なんでもありません。お母さんによろしくお伝えください。」 「わかった。」 「ありがとうございます」 「あーあと時雨。この時間は忙しいからあまり電話しないでくれ。」 「わかりました。失礼しま…」 ガチャっ 家族なんて、所詮こんなものである。
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