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私を認めていただけますか?
8月19日、土曜日。
時刻は13時24分。
高城ゆかりは、横浜市港北区にある大きな住宅の前に立っていた。
隣には、恋人の石田彰文。ここは彼の実家だ。
ゆかりの顔を見て、石田はニコッと笑った。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「そんなこと言われても……」
緊張してしまうのだから、どうしようもない。
今日、ゆかりは彼の両親に挨拶をしに来た。
ふたりの結婚を、認めてもらうために。
外の暑さに加え、大きな緊張のせいだろう。先ほどからダラダラと汗が止まらない。
「彰文だって、最初にうちに来た時はすごく緊張してたじゃない」
少々恨みがましい口調で言うと、石田は「そうだっけ?」ととぼけた。
ゆかりは「もう」と言って石田を睨んだ。
羨ましいほど白くきめ細かな肌に、全く汗が滲んでいないのも腹立たしい。
眉を寄せながらハンカチで額の汗を拭おうとした時。
突然、玄関のドアがガチャッと音を立てた。
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