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「こんにちは。ーーおはようだと、思うけれど」
この異様な状況で、異常なことを言い出した私もなにかおかしいのだが、そう指摘された彼は、ぱららと五本の指を折りたたませ、そうかそうか、と瞬きをした。
「言語は難しい。直接、ダイレクトにイメージを伝えられる、テレパスとは、どうやら訳が違うようだ。こんにちはは正しくない、そうかな」
「そのわりには、よく喋ると思う。でも、こんにちはは、一部正しい。貴方が、私に、あったことに好意的であるなら」
「なら、違わない。私は敵ではない。そう言いたかった」
私の頭上を歩く。先程から足音がしない。私がマスクをしていないのに、彼はマスクをしている。そもそも彼は彼であっているのだろうか。発せられる音の低さで勝手に彼と言っているが、性差は有るのだろうか。ぽたりぽたりと落ちてくる点滴が跳ねるのをみて冷静になった私は、科学者らしく、情緒なく、違いを見つけては何故だろうとその理由を考えたりしていた。
「勝手に助けだしたりして、すまない。あの中だと、君がいちばん、状態が良かったから」
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