記憶の青

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私は分からなくなってしまった。無くなってしまったと言う意味も、彼が言っている案内のことも、自分のことも。その代わりに、卵のすり替えのように、元からないなどと言う言葉のせいで、自分はもしかしたら地球生まれではないんじゃないかとか、そんなことを考えてしまった。でないと、もう私は二度と、帰ることも、誰かに会うことも、家にいる可愛い犬にただいまを言う事もないことを、受け入れられなかった。両親は、友達は、あのいけ好かなかった訓練所の受付嬢は。なんでそう言う時に限って、自分と仲が良くない人のことばかり思い出すのだろうと顔を横に背ければ、目の窪みに溜まっていた涙がとろりと枕に垂れた。 「泣かないで」 「貴方は泣くの」 「泣くことはない。でも、ヌェリスェドという生物は、寄り添って泣く。誰かが死んだ時とか、彼らが巣穴に隠していた大切なものを無くした時」 「その、……ヌェリスェドは私と似ている」 「見た目は似てない。君が今泣いたのをみて似ていると言ったから、性質だけの話」 「ならヌェリスェドと会いたい。ヌェリスェドはいる」 彼の方を向いた私を、今度は向こうは目をそらした。 「ヌェリスェドは今いない。ここではヌェリスェドは飼えない。ヌェリスェドは広い場所が好きだ。ここが広くなくて申し訳ない」 「いや、ううん、まぁ、そうか。ごめん」
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