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無茶なことを言った。私はまずいことをしたと今更の罪悪感で言葉を詰まらせた。彼は通りかかっただけで私を助けてくれた。私は助けろと信号を送ったわけでもないのに。泣くことはない彼が助けたそれは、もうないと彼が言った地球の言葉で表すなら、親切心であったし、私はそれに対してまだ言っていない言葉がある。地球代表として、一人の人間として。
「ありがとう。心配してくれて」
「通りかかったら居たのは、単なる運に過ぎない。あのとき、無くなってしまう前に来ていても、どうする事もできなかった」
おそらくは。そう言った彼の言葉を振り返るように、私は改めてこの部屋をぐるりと目だけ動かして見回す。ぼんやりと暗くて、私が眠っていたこのベッドだけ明るい。このベッドがもしかしたら一人用で、私に使ってしまった医療も、もしかしたら彼のものだったのかもしれない。というか、そうとしか言いようがない。それほどに、ここにはほかにものも置いてなかった。
「旅行の、最中だった」
「旅行…。まって。ああ、そう、見て回ること。そう、その途中だった。それは、楽しいことだから」
「楽しかったのに、大変なことをしてしまった」
「大変な目にあったのは、君の方だ。楽しいことをする、つまり、私には猶予があった。余裕があった。余裕があったから気がついた。さっきも言った、運が良かったと。君からすれば、とても運が悪かったことだろうけれど」
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