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記憶の青
海から私たちは生まれた。
そういうと、彼は首をひねって、海とは、なんだろうと、酸素の詰められた甲板の上で、薄青の顔にガスマスクをつけて私を見つめる。
群青の光は、海の色だ。
そう言ってもやっぱりピンとは来ないようで、光の元である小さな星の模型をくるりと回して、きらきらと凸凹で乱反射するのを受けて、顔面を覆う硝子が瞬くのを、眩しそうにしていた。
群青は、もうこの宇宙にはない。
この模型が、青を忘れないように作られたこれだけが、この宇宙に存在する、ただ一つの青の歴史になってしまった。
だから、わからないのも当然だ。
私たちの星は、もう滅んでしまったのだから。
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