1人が本棚に入れています
本棚に追加
高校生の頃、母子家庭だった私の家は母親が出張する度に溜まり場になっていて、その日の朝から母親は出張だった。
当時、まだVHSだった『ほ○とに○った!呪いの○デオ』シリーズの新作を近くのレンタルショップで借り、友人達が昼過ぎに6人ほどで家にやってきた。
マジで怖いビデオがある、と、学校で大流行していたのだ。家に来ていた面々は同じサッカー部の男子が5人、マネージャーの女子が1人。
「まずはこれ見なきゃ始まんないっしょ?」
「おー、新作じゃん。」
すぐに2階の私の部屋に集まり、ビデオを再生。3人はベッドの上に座り、私を含む4人は地べたに座っていた。
怖がる奴を茶化したり突然大きな声を出して脅かしたりしつつ、パーティー感覚で本編を観ていると
「ちょっと待って、なんかS美の様子がヤバい。」
ベッドに座っていたTが隣に座っていた唯一の女子、S美の異変に気付いた。
壁に深くもたれているS美がゼェハァゼェハァと過呼吸状態に陥っている。
「すぐ水持ってくるわ!」
急いで1階に降り、コップに水を注いで戻るとS美は座ったまま泡を吹いて痙攣している。皆、あたふたしてどうすればいいのかわからないといった様子だった。
「S美、“私実は霊感強いからこういうの観たくない”って借りる時に言ってたんだよ!関係あるのかも!」
「絶対それが原因だろ!とりあえずビデオを停めよう!」
リモコンの停止ボタンを押す。しかし何度押してもビデオが停まらない。リモコンを放り投げて、ビデオデッキ本体の停止を押す。それでも映像が停まらないためコンセントを抜こうとすると、何故かコンセントも抜けない。
不可解なことに、両手を使って力尽くで引っこ抜いたコンセントは挿し穴に半ば焼き付きかけていた。
これはヤバいと思い、ダメ元で信心深い母親に電話を掛けて包み隠さず現状を伝えたところ
「バカ!なにやってんの!神棚の真ん中に神鏡っていう小さい鏡があるから、急いでそれを確認して、もし鏡面が汚れてたら柔らかい布で拭いて綺麗にして。」
「…ごめん!ありがとう!わかった、見てみる!」
眼鏡拭きを自分の眼鏡ケースから抜き取り仏間の神棚を見てみると、まず、その鏡が前のめりに倒れている。手に取ってギョっとした。何も映らないほど鏡面が白く濁っている。
眼鏡拭きで鏡面を拭く。拭く。拭く。
これがまたどうしたことか一向に綺麗にならない。
最初のコメントを投稿しよう!