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八月九日。
この日、長崎の全ての学校は登校日だ。
私は、この日が大嫌いだ。
せっかくの夏休みに朝早く起きて、じーわじーわと、蝉が煩く鳴いている坂道を、汗だくになって学校まで歩いていくだけでも嫌なのに、さらにその後、蒸し風呂のような体育館で、高学年の生徒達が調べた、戦争学習の発表を聞かされたり、被爆当日の映像などを見せられたりしなくてはならない。
あの日の惨劇の映像や写真は、それはそれはショッキングなもので、低学年の頃には平和学習が始まる六月辺りから学校へ行きたくなくなるくらい、トラウマだった。
十一時二分。
街に響き渡る程大きなサイレンと、浦上天主堂の鐘の音を合図に、みんなで黙祷を捧げる。
カトリックの私は、十字を切って胸の前で腕を組み、そして目を閉じた。
この沈黙が苦手だ。
みんな、何を考えているんだろう?
ちらりと目を開けて周りを確かめてみたくなるのを、いつも我慢して『黙祷、やめ』という教頭先生の言葉を待った。
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