あの日、長崎の空は青かった

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あの日、長崎の空は青かった

「えっちゃん、頭巾はちゃんと持ったね? 」 私のおばぁちゃんは、学校へ行く私をいつも縁側から見送って、最後は必ずこの言葉で締めくくる。 今日みたいな夏休み中の登校日だって、それは相変わらずだった。 ちなみに、私の名前は有紗(ありさ)と言って、『えっちゃん』なんて呼ばれ方はこれまでずっとされたこともない。 要するに、おばぁちゃんはボケている。 私が小学校に上がった頃からずっとこの調子だから、かれこれもう五年にもなる。 他のことはしっかりしているはずなのに、何度言ってもこの二つだけは治らないから、正直、うんざりしてきた。 「ばぁちゃん、いつも言いよるやろ? あたしはアリサ(・・・)で、今はもう戦争もなかっちゃけん、頭巾はいらんと!」 リウマチで変形した手にうちわを握りしめ、険しい顔で私の背中を見ていたおばぁちゃんよりも、さらに険しい顔でそう言ってから、そそくさと家を出た。
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