穀雨

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 次の瞬間、2歩か3歩の助走をつけて、慶が跳んだ。「跳」んでいるのだけれど、まるで「飛」んでいる。華はその美しいフォームに見とれた。慶の跳ぶ姿がスローモーションのように華の目に映る。  慶は指先でボールを押し、着地する。ボールはふわりと宙を舞い、地面に落ちた。  慶は落ちたボールをさっと拾うと、華へと渡す。 「はい。どうぞ。じゃあまたね」  ボールを受け取った華は、なんとか声を絞り出した。 「あ、ありがとう」  慶は背を向けて歩いていった。
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