穀雨 貳

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 春の風が高校のある丘を撫でる。陽気な空が春を謳歌していた。桜の花びらがひらりと舞う。  華は先月買ってもらった電動アシスト付き自転車で坂を上っていた。立ち漕ぎをする男子高校生が華を抜いていく。華は座ったままアシストに任せてのんびりと漕いでいた。  どうして高校は坂の上にあるんだろう。平らなところに作ればわざわざ坂を上る必要もないのに。これから夏になったら登校するのもまた大変だなあ。女子は汗をかけないんだよ。  慶くんも自転車で登校するのだろうか。たぶんそうだと思うけど、なんだか想像つかない。昨日の慶くんのジャンプは綺麗だったな。想像はつかないけど、でもきっと慶くんは自転車に乗ってても綺麗なんだろう。
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