裏道の喫茶店

東京

　もし運命があるなら。そうか。慶くんは私のことを振ったけど、私が慶くんのことを振ったのと同じように、慶くんにも何か理由があって。

　つまり慶くんは、私に振られた後も私を好きでいてくれていた。

　もし運命があるなら、っていう言葉の意味はきっと、5年後も両想いのままだったなら、ってことじゃないだろうか。

　今日は3月21日。慶くんがあの言葉を言った日は確か、3学期最後の日。それは今日と同じ3月の……。

　覚えてない……。でも、20日か、21日だったような。

　もし今日、3月21日が、ちょうどあの最後の日の5年後なら。私はあの喫茶店に行かなくちゃ。

　慶くん。私は、今でも貴方が。

　華は駅を飛び出し、喫茶店へと向かって走った。