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僕は駅の改札でICカードを通しながら、スマートフォンで時間を確認した。たぶん、この時間ならまだ間に合う。
すっと指先でアプリを起動させ、案の定ぶすくれた声で応答してきた女に僕は笑いを噛み殺しながら声を掛けた。
「あっ、カナコさん? コンフィ食べたくありませんか。僕さっきすごいいい店、見つけたんですけど」
目の前に滑り込んできた電車は急行で、生ぬるい風がホームを撫でつけていくけど少しも不快に感じない。
トマト、ピーマン、とうもろこし。サルサ、ざるそば、ところてん。屋台料理にかき氷、南国料理も捨てがたい。
今年もまた容赦なくだけど魅力的な夏がやってくる。
僕の好きなあの人は、どこか夏に似ている気がする。
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