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「ごめんなさい」と私は下を向いた。
「謝らないでよ。
この夏は楽しかったな。
ナナコちゃんの料理はどれも美味しかったし、
あの、マイペースな男は、どのスタッフにも話しかけて意見を聞くから、
ぼくまで話し合いの場に引っ張り出されて…
…意見の衝突はたくさんあったけど、
理解し合える事ができて、他部門の人とも上手く仕事が出来るようになった。
こうやって、みんなと花火を見るなんて、今までの僕では考えられないよ。」
と、スッキリした顔で笑った。
「それに、僕は知りたかったんだ。
ひとは大切なモノを失っても、
また、前を向いて歩いていけるのか。
…ナナコちゃんは、歩いて行けそうでしょう?リュウ先生と一緒なら。」と言って、
「ぼくも、前の奥さんの事。少しずつ思い出にしたい。
まだ、写真の整理もしていないし、彼女の荷物もそのままだ。
…ナナコちゃんは片付けた?」と聞く。
私が横に首を振ると、
「そっか。リュウ先生を選んだのなら、少しずつ片付けないとね。
結構、そのネックレスもされてると辛いかな。
それ、修一君から貰ったものでしょう。」と聞いた。私は頷き、
「このネックレスのおかげで、1人じゃないって思って来れたの。
でも、1人でも生きていく決心をしないといけないって思ってる。」
「なんで、ひとり?」と、菅原先生は変な顔をする。
「だって、私だけ好きでも仕方ないでしょう。」と言うと、急に笑い出し、
「なるほどねー。これは大変だ。いや、うーん、困ったな」と頭を掻いて、
「ナナコちゃん、リュウ先生に振られたら、いつでもぼくのところにおいで。
もう少し、ナナコちゃんの事好きでいるようにするからさ。」
と、ギュッと引き寄せ、額にキスをして、帰って行った。
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