痛哭

37/38
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
あれから3年経ち,俺は都内の居酒屋でアルバイトをしながらなんとか生きていた。大学進学は諦め,高校も3年の夏休みが終わると同時に自主退学した。 両親と過ごした家は処分し,そのお金でなにか手に職をつけようと思ったが,なにもする気が起こらず,気が付けば毎日生きるのに精一杯だった。 1人で過ごす夜は両親のことを思い出すので,早朝まで続く居酒屋でのアルバイトは自分の心を紛らわせるのに最適だった。 あれ以来,神社,仏閣に近づくことを避け,いまだに両親が俺を迎えにきてくれるんじゃないかと心のどこかで望んでいた。 箱根神社の宮司さんたちとも,あの日以降,連絡をとることはなかった。 時々,目をつむると土下座をしながら謝り続けるお婆ちゃんの姿が脳裏に浮かび,俺を苦しめた。 動物も嫌いになり,犬や猫を見るだけでも胸が張り裂けそうになった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!