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その日、達也が空を見上げるとあいにく暗雲が垂れ込めていた。
しかし、達也の予想では3000mでは晴天だった。
二人は、搭乗を予約していた新木場の東京ヘリポートを訪れた。
乗るのは、ロビンソン社のR44という4人乗りのヘリコプター。
操縦して頂けるのは、新日本航空の長谷川機長という方だった。
長谷川機長が前席右側に座り、真里が前席左側に座った。
達也が後席に座り、全員、ヘッドセットを装着する。
ヘリに乗って再び達也が空を見上げたが、未だ全天を雲が覆っていた。
前席で空を見上げた真里が心配そうに呟いた。
「青空見えないね。大丈夫かな?」
達也は大きく頷きながら言った。
「大丈夫、上空は晴れているから」
残念ながら資金的にも時期的にも、これが最初で最後のチャレンジである事は自明だった。
神を信じていない達也であったが、空を見上げて初めて天に祈った。
離陸したヘリは北に進路を取りながら、少しづつ高度を上げていく。
この辺りは、民間航空路が入り組んでいて、高度を上げる場所は限定されると長谷川機長が説明した。
達也はヘリの高度計を見ていた。
3000フィートで雲の中に入り、9000フィートで雲を抜けた。
その瞬間、眩しい光が達也の目に届いた。そして、
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