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防犯カメラには、ライトが点く、人影が走り去る、ライトが消える、という約五秒ほどの映像が映っていた。ちらりと少年の横顔が浮かび上がる。百合江さんの家のライトに照らされてはいるが、その人物が歩いているのは、酒田さんの家の庭だった。
つまりライトをつけていたのは人間だった。さつきは見るからにホッとした様子で、肩の力を抜いた。
「あっ、ここで、止めて!」
おねえが甲高い声で繰り返し再生していた映像を、一時停止させる。
「この子、知ってる。この前チルトゥルの近くで、何人かの男の子達に絡まれていたわよ」
おねえが人差し指をくちびるにあてて、考える仕草をする。
「ええっと。確かチルトゥルで幽霊騒ぎの事を聞いた翌日の事よ」
おねえは少年を見かけたいきさつを話したが、少年の居場所や身元などについて役立つ情報はなかった。絡んでいた若者達にも見覚えはなかったという。
「私達が見張ってはいることもばれてしまったから、もう来ないかもしれないわね」
と幸子さんは櫂を軽くにらんだ。櫂は思いがけない方向から矢が飛んできたので、ウヒャッと変な声をあげて首をすくめた。
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