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大きな屋敷に住む男
海の見える高台にその巨大なお屋敷はあった。明治時代の初め頃に建てられ、その後の巨大地震にも空襲にも生き残り、近代化されつつある住宅街の中で、そこだけが別の時代のように浮き立っていた。
敷地は千二百坪ほどもあり、池のあるちょっとした公園といった広さの庭のやや北側に、江戸時代を思わせる純日本風の二階建ての豪壮な屋敷が建ち、かと思うとそのすぐ隣りに続きとして、薄い緑色をした背の高い明治期の洋館が並んで建っていた。敷地の南の端の方にはレンガ造りの何に使うのか、古びた煙突みたいな高い塔が一つポツンと立っている。何ともアンバランスな並びだが、なんでも受け入れてしまう寛容な明治期の時代性がそうさせるのか、なぜか不思議と許せてしまう独特の雰囲気があった。
この奇妙なお屋敷に、青年というには年を取り、中年というにはまだ若いちょっと頼りなげな男が一人住んでいた。
そしてもう一人、この男に雇われたお手伝いさんの、まだ若いが決して世間知らずな娘という年ではない、これまたちょっと頼りなげな女性が、昼間この屋敷に通っていた。
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