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入り口を康介が開けると、ギシギシと錆びた鉄のこすれる音が中の空洞に響き渡った。
康介が先に中に入り、何かスイッチを入れると、中にオレンジ色の小さな明かりが灯った。
「わぁ」
君子が康介の後ろについて中に入り、上を見上げると、塔の中は外壁に沿うように螺旋階段が巡っていた。
「こんな作りになっていたのですね」
初めて中を見る君子は感心してその螺旋階段を驚きをもって見つめた。
康介はそのまま塔の中の螺旋階段を昇って行った。君子も黙って後に続く。
「足元に気を付けてください」
「はい」
階段は幅が狭く、上りも急だった。
息が切れて、太ももが辛くなってきた頃、二人はやっと塔のてっぺんについた。
「ここはいったい・・」
てっぺんは六畳くらいの広さの屋上になっていて、その周りを腰の辺りまでの高さでやはりレンガで囲いが巡っていた。その上に、真鍮製のとんがり帽みたいな屋根がちょこんと乗っかている。
「これは昔の見張り台だったそうです」
「見張り台・・」
上に辿り着いてみると、想像以上にそこは高かった。海が一望に見渡せ、周囲の住宅街も遠くまで見渡せた。
「でも今は、とても星がよく見える」
「あっ」
君子が夜空を見上げると、数えきれないほどの星々が夜空を覆っていた。
「素敵でしょ」
「はい」
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