ちょっと戦争行ってくる

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ちょっと戦争行ってくる

ちりりん、と涼しげな風鈴の音がした。 「ねぇ」 聞き馴染みのある声に、縁側に寝そべりアイスをほお張っていたジローは頭をぐるりと捻った。 明かりの付いていない部屋の中。 同じくアイスを手に持ちこちらを見下ろす女――――ミーコ。 「来週、戦争だって」 ちりりん。 ミーコの艶のあるきれいな黒髪が、縁側から入る風に乗ってふわりと揺れた。 「……ふーん」 「……それだけ?」 んー、と唸りながら再び庭側へと頭を戻すジロー。ミーコは黙って彼の隣に腰掛けた。 「……まぁ、初めてじゃないし」 ジーワジワジワ。セミの音が五月蝿い。 「……よく言うね。前回瀕死で帰ってきたくせに」 「あー、そんなこともあったっけなぁ」 あれはきつかったなぁと、笑い飛ばすジローの声。 今日は日差しがきついせいか、二人とも額に汗が流れている。 「なぁ、そのアイス何味?」 「レモン」 ジローは口を大きく開け、指でトントンと自分の口を指す。 ミーコはため息をついて、食べかけのアイスをそっと彼の口に入れた。 「ん、うま」 ジローはアイスを噛みしめながら、嬉しそうに笑う。 「俺のも食う?」 「何味?」 「ラムネ」 ミーコはこくりと頷いた。ジローはにやりと笑うと、自分のアイスを彼女の口に入れた。 「はー、やっぱり夏はアイスだなー」 「……そーね」
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