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「……っ」
ふらついた私を、彼が抱きとめる。
「大丈夫ですか?」
ちょっと量を入れ過ぎたかな。その言葉に、私は声を震わせた。
「おまえ……なにを、したんだ」
「ネットで買った睡眠薬をいれただけですよ。害はないので安心してください」
彼は私を引きずり、ベッドに横たわらせた。優しく髪を梳いて囁く。
「嬉しいでしょう? 伊坂さん。わざわざパスワード変えておいたんですよ」
私がああすることを読んでいた。わざと上着からスマホを覗かせておいたのだ。
「あなたの考えてることなんかすぐわかるんですから」
羽柴はシャツのボタンに手をかけた。私はその手を掴む。
「羽柴、こんなことは……」
「期待させて悪いけど、あなたの思ってることとは違いますよ」
期待などしていない。それでも肌に触れる指の感触に、私は身体を震わせた。彼はわざと私が感じるような触れ方をしているのだ。彼はシャツを開いた後、私の胸元にシャンパンをかけ、コットンで丁寧に擦り付けた。口にハンカチを押し込まれ、私は呻く。羽柴が手にしていたものを見て、私は息を飲んだ。鋭く細い針を三本束ねたものが握られていた。まさか、あれで刺す気なのか──。
「ちょっと痛いですよ」
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