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針が皮膚に刺さると、ちょっとどころではない痛みが走った。私は喉の奥で悲鳴をあげ、意識を失った。
私は、朦朧とする意識のなかで身じろぎした。胸がズキズキと痛む。針で刺されたのだから当たり前だ。目を開くと、涙がつっ、とこぼれ落ちた。涙で霞んだ視界に、羽柴の顔が映り込む。一体なぜこんなことを。胸が痛くてたまらない。
「伊坂さんが俺のものだっていう印ですよ。あなたが結婚しても、俺から離れようとしても、一生消えない」
羽柴はそう言って、私の目尻を拭った。薬を飲まされたせいなのか、痛みよりも睡魔が強い。私は再びまどろみに落ちていった。
翌朝目覚めると、羽柴はすでにいなかった。私はノロノロとベッドを降り、洗面所へ向かった。顔を洗い、鏡に目を向けた私はギョッとした。私の胸には、青い薔薇の入れ墨が刻まれていたのだ。素人の手によるものだからか、ひどく歪んでみえた。その歪みは、まるで羽柴そのものを表しているようだった。
私は入れ墨を消そうとあらゆる手を講じたが、何をしても肌に染み付いた青は消えなかった。羽柴を訴えることもできたのに、私はそうしなかった。私が彼の罪を告発すれば、私と彼の関係も表沙汰になってしまう。羽柴はそれを計算に入れて事に及んだのだ。この入れ墨は、まるで呪いのようだ──
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