3 走れ!走れ!

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3 走れ!走れ!

 “周知”とは、無線利用者に電波利用のルールや法的原則を認識させ、健全な電波利用を広める活動のことを言う。  オリンピックの運営は、無線機を使った連携が肝となる為、開催時に通信障害が起きれば競技に限らず観客の誘導にも多大な混乱を招く。  その為、現段階から入念な周知が必要となる。  今、近くの環状線では、警察と総通局による、大規模な違法無線の摘発が行われており、そのかたわら、二人の職員は、アマチュア無線利用者の交信を妨げる発信元不明の電波を調査しに来ていた。  踏切の鐘がやかましく鳴り響き、快速電車が目で追える程ゆっくり走っている。  踏切の前では車が列をなし、通勤や通学に向かう人々が群がっていた。  まるでアヒルの行進を思わせる速度に、踏み切りで待たされる者達は苛立ちを(あら)わにする。  十和田監視官は足を止め、アヒルの行進に引き込まれる。  足を止めた先輩に習い、月宮後輩も同じように電車に目を向け意見を述べる。 「遅延ですね。時間合わせで、あんな遅く走ってたんじゃ快速の意味ないですよ」     
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