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ひまわり畑の中で。
セミの声が鳴くお盆の日、僕と両親は祖父母の家へと向かう途中にある、大きな向日葵畑へと寄った時の事。
僕は、たくさんの向日葵にはしゃぎすぎて、母の手を離してしまい、気がついたら迷子になってしまった。
周りは、僕より背の高い黄色向日葵が囲み、まるで黄色怪物達に睨まれてるようで、怖くなって、母を呼ぶが、遠くから僕の名前を呼ぶ声が聞こえるだけで、姿が見えない。
(そういえば、あの時は二度と向日葵畑には行きたくないって思ってた。)
泣きそうになり、しゃがみこんだ僕の前に、知らない髪の長い女の人が僕の前に立っていた。
「お姉ちゃん、誰?」
聞くと、ニコッと笑って、僕の手を取って歩きだした。不思議とその手が懐かしさを感じて、さっきまでの恐怖は消え、周りの向日葵も温かく見守ってる様に見えた。
どの位歩いたんだろう、目の前には、心配する母の姿が見えていた。
「たっちゃん、良かった。」
僕を見た母は僕を抱きしめて言った。
「あれ?お姉ちゃんは?」
僕が言うと、母は首をかしげて、
「何言ってるの?たっちゃん、一人で歩いて来たんでしょう」
その後父も来て、こっぴどく怒られた。
(あの時、僕の手を繋いで、母の元へと連れてくれた、女の人は一体誰なのか?幼い僕は、そんな事もすっかり忘れてた頃、意外な所と時期にその正体が分かる)
「子供の頃は、黄色怪物に見えた事もあったんだよなぁー。」
苦笑いしながら、また向日葵を見る。
「今は、僕にとって、夏の象徴と温かい思い出だよ。まさか、あの女の人が。」
ふと、遠い目で、青空を見る。
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