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俺の頭の中にある考えがひらめいた。
俺はベッドの上に座り直すと、考えをまとめてみようと深呼吸をした。
「いや、これしかないでしょう。」
俺はもう自分を納得させるのはこれしかない、と決心した。
「あら、昌樹、落ち着いた?ごめんね。突然こんな風に言った母さんが悪かったわ…。」
母親がおどおどした感じで言った。
「いや、母さんのせいじゃないよ。俺が子供っぽいんだ。それよりお願いがあるんだ。」
芽亜里も俺と母親を交互に見て目が泳いでいた。
「最初から、俺にも分かるようにもう一度話して欲しい。母さんが見聞きした事も一緒に……。話したくない事は話さなくていい。何故母さんが怪しいと思ったのか、それを教えてほしい。」
しばしの沈黙があった。
「去年の冬に……。聞いちゃったのよ……。ここでお父さんが携帯で話しているのを……。愛しているよって……。君の事をいつも考えていたって……。
私は買い物から帰って来て玄関で呆然と立っていた。
お父さんは気が付いていないようだったから、もう一度外へ出て、そこらを一周してから、たった今帰って来たって振りをしたのよ。おかしいでしょう?」
「それから、今年の春休みにお父さんの携帯の送信メールを見たら、知らないアドレスに『じゃあ、一緒に暮らしましょう』って書いてあったの……。」
母親の杏子は涙声になって言った。
俺は絶句した。しかし、もう一度深呼吸をして勇気を奮い起こして言った。
「藤木田さん、俺を連れて行って下さい。父の単身赴任先へ。無償のアルバイトとして。一切トラブルはおこしませんから。」
母親と芽亜里は驚きの表情で俺を凝視した。
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