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結局、母親の杏子は芽亜里の提案に同意した。
母親も違和感は感じていたのだろう。あの父さんが、いきなりこんなに派手な裏切りをするとは俺にも信じられなかった。
「昌樹は貴方と一緒に父親に会いに行く、という体裁でお願いします。あなたの仕事の邪魔になると思う場面には昌樹を連れて行かないで下さい。
昌樹に見せても大丈夫だと思う場面にだけ連れて行ってもらえますか?貴方の判断にお任せしますが。勿論、昌樹の旅費はこちらで出します。」
俺は芽亜里と一緒に二泊三日の旅に行く事になった。
母親はいつもより憂いのある笑顔で俺を玄関まで見送った。
「お父さんは貴方の事は忘れていないと思う。きっと貴方の顔を見たら戻って来るとは思う。
お母さんも意地になっていたけれど、芽亜里さんの話を聞いて、何だか心が楽になってきたわ。」
母親は真顔になって俺を見つめると、こう言った。
「でも、何を見ても驚かないでね。親だって人間なんだから。お父さんを許してあげて。」
俺は軽くうなずくとバス停まで歩き始めた。
芽亜里とは駅で待ち合わせしていた。
「私は車の免許を持っていないので、バスで行く予定です。かなり時間がかかりますので、本でも持ってきてください。」
俺のスマホに芽亜里からメールが来ていた。
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