第1章 プロローグ

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第1章 プロローグ

 昨日も今日も真夏日を越えて34℃になった。テレビは連日そのニュースと汚職の話題ばかりだ。  俺はリモコンでテレビを消すと扇風機の風力を最大にした。北海道でこの気温は珍しい。内陸部のこの都市でもあまりない。  北海道では真夏日の日数がほんの二週間足らずなので、エアコンをつけない家庭も多いときく。だが年々暑い日が増え続け、この間帰って来た単身赴任中の父親がエアコンを付けようか迷っていた。  「昌樹、コンビニでアイスクリーム買って来て。」  キッチンから母親の杏子の声がした。  「嫌だよ。外に出たくないよ。」  しばらく返事がなかったので、この暑さの中、自転車でコンビニに買いに行かされる地獄から解放されたと思った。  「今日お客様が来るから、お願い。高そうなのを買って来て。」  俺は観念して、わかったよと言うと玄関からスニーカーを履いて外へ出た。 門の外へ出ると出会い頭に人とぶつかりそうになった。  「アッと……、ごめんなさい!」 俺は自転車を止めて、転びそうになった体を立て直すと顔を上げて声の方を見上げた。 「あ……こっちの方こそ、スミマセン。」  俺はそのぶつかりそうになった女性の姿を見て一瞬動きが止まった。  「ごめんなさい。どこかぶつけた?」  女性はそう言いながら俺の方へ近づいた。  長い髪をアップにした、小柄なその女性の見開かれた目が大きくて外国人に見えたが、よく見ると切れ長の目で純和風の顔立ちだった。とても涼しげな印象でこの暑さの中で違和感さえ感じた。  「大丈夫です。」  女性は安心したように軽く会釈して通り過ぎた。それから数秒後だった。  「あの……、ここら辺で生田さんていうお宅をご存知ありませんか?」  俺は自分の名字を言われてまた、急ブレーキをかけた。  「生田はうちですが……。」
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