牛の逸物

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「お手元に引き渡しても宜しゅうございますが、しかしこの牛は心の臓を酷く患っておりまするぞ。この上はたとえ立ち上がろうともそう永くは持ちますまい。とてもお公家様方のお役には立ちますまい」 「なにまことか」 「私は医道を収めた者です、診立てに間違いはございません。これここに証拠もございます。いかがでしょう、いっそこの私めが憐れな牛を預かるというのは。丁重に弔い、墓も持たせますゆえ」 「む……」 役人どもが相談を始めましたので、これはしめたかと思いました。はたして期待通りに事は運んだのでございます。 こうして小生は、坊主、いえ空穏さんに助けられました。ご恩ついでに連れ立って、旅のお供をすることになったのでございます。
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