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「そんなに酷い仕打ちを受けたのに、なぜ俺を助けたんだ?」
人間不信に陥っても仕方がない、いや、実際に他人との接触を避けているソレが、見ず知らずの俺を助けたのを疑問に思って訊いてみる。
「……金髪、だから……」
ソレは暫く口を開かなかったので、答えたくないのだろうと理解してホタルの光に見入っていると、殆ど吐息の掠れた声が返ってきた。
母親が来たという、遠い遠い国と繋がっているという湖で倒れていた、母親と同じ金髪の男。
ソレにとっては、助けるには充分な理由だったのだろう。
もしかしたらソレは、同じ髪色の俺に母親を重ねているのかもしれない。
まだ親の愛を求める少年期に、なんの前触れもなく捨てられた(と思っている)ソレは、未だに両親が帰ってくるのを待っているのかもしれない。
切れ味もよく頑丈だが、一定の方向からの攻撃で簡単に折れてしまう剣のようなソレに目を遣る。
淡く光る湖畔を見つめるソレは、人々を凶行に走らせるような醜さはどこにもない。
醜いどころか、神聖さすら覚える、人間離れした美しさを持っている。
脅威を感じる美しさに、人々は狂ってしまったのだろうか?
「綺麗だ……」
目の前のホタルの瞬きも、隣でそれを見つめるソレも。
まるで異世界に迷い込んだような幻想的な光景を、夜が更けるまで堪能した。
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