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 ソレとの出会いは偶然だったが、いずれは出会う運命だった。  なぜなら、今回のターゲットはソレだったからだ。  真っ白な肌。透明な髪。紅い瞳――。《穢れ》の特徴だと聞いていた通りの容姿。  《穢れ》とは、俺の生きる時代の者と、トリップした先の時代の者の間に生まれた子供のことをいう。仕事前に長々と説明された内容は殆ど覚えていないが、長い時を経て変化した遺伝子の影響で、《穢れ》は《穢れ》と分かる容姿で生まれるらしい。  ターゲットを見つけたら、すぐに始末してきた俺だ。  前の時代の歯車が少しでも狂えば、後の――俺達の時代に影響が出る。始末が遅れて、ついさっきまでいた者が唐突に跡形もなく消えることは、ままある。  突然消滅を防ぐ使命に燃えてなんて、ヒーロー気取りでやっているわけではない。さっさと仕事を終えて、報酬で酒を呑みたいからだ。  だが、ソレはすぐに始末しなかった。  利き手である右手首を痛めたのが理由だ。湖に落ちた時に、岩か何かに強打したのだろう。  仕事に与えられた期間は一ヶ月。それだけあれば、怪我も治る。  わざわざ怪我が治るのを待たなくても、銃を向けて引き金を引くだけなので、左手一本でも仕事はできる。  それをしなかったのは、出発前に馴染みの飲み屋が、改装で一ヶ月ほど休むと言っていたのを思い出したからだ。  楽しみがないのに、急いで帰る必要はないからな。
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