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皿を掴み、中身を飲み干していく俺をチラリとだけ見て、黙々と食事を続けるソレ。
「旨かった。ごちそうさん」
食には拘りのない俺だが、ソレの作る料理をもっと食べてみたいと思った。期限のギリギリに始末すれば、一ヶ月はこの料理を堪能できる。
仕事後は即座に戻るというのが審判者のきまりだが、その時代の者と深く関わらなければ、多少の観光は許される。そんなものには全く興味がなく、トリップ先の時代に半日も滞在したことのなかった俺だが、たまにはバカンスを楽しんだってバチは当たらないだろう。
空になった皿を持ち、シンクに向かうソレ。ささっと皿を洗い終えると、両親の写真が置いてある棚の脇にある扉の先、恐らく寝室なんだろう部屋に入っていった。
俺も眠ろうと、灯りを消して部屋の隅の床に横になる。すると寝室の扉が開き、漏れてきた光が顔を照らした。
「ここで寝ては迷惑だったか?」
寝室の入口に立ち、俺を見つめているソレに問い掛ける。何か言いたげに口許をもごもご動かしているも口は開かないソレは、背中を向けて寝室に戻っていった。
扉は開けられたままで、俺に向かって真っ直ぐ伸びる光は、手招きをしているようだ。導かれるように立ち上がり寝室に入ると、ダブルベッドがあった。
ソレは、壁際に寄って横になっている。背後には、どうぞといわんばかりに一人分が空いている。
「ここで寝てもいいのか?」
返事はない。まぁ期待はしていなかったがな、と苦笑しながらベッドに入り、遠慮なく瞼を閉じる。
床の何倍も心地いいそこに、すぐに眠りに落ちた。
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