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 右手の痛みが引くまで、本当に何もせずに過ごした。  日がな一日、木陰で雲が流れゆく様を眺めていたり、昼寝をしている振りをして畑仕事をするソレを観察していたり、自然の中にただ存在していた。  あれ以降、喋る機能など存在していないかのように、ソレは口を開かない。何がソレの気に触れるか分からないので、俺の口数も減った。  俺と頑なに目を合わせようとしないソレだが、食事は三食用意されるし、ベッドには俺の眠るスペースが空けてある。  どうやら、俺の存在を認めてくれてはいるようだ。
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