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その日、初めて砂浜でセックスをした。地元の人しか来ないような海岸で、念入りに死角を探しての行為だったが、それでも誰かに見つからないかドキドキしながらだった。小さい頃のかくれんぼに似たドキドキと、夜風の中で彼と原始の姿でつながることへのドキドキが、並列して主張していた。
彼の焦げた顔が、月明かりの影になる。黒い夜空には満天の星が広がっている。いつもより動きが激しくて、背中に小石や貝のかけらが擦れて、昼間の余熱も残っているから少しひりひりした。つないだ手は汗で滑って、それでも一度も離れなかった。
静かなさざ波の音が吐息とハーモニーを奏でていた。次第に宙に浮かんでいるみたいに思えてきた。闇夜の中を遊泳する。もしかしたら、海の中だったのかもしれない。私は沈んでいく人魚、彼はがむしゃらに手を伸ばす王子様。その予感を、私は自分で感じていたのかもしれない。
彼の行為が勢いを増していく。私の子宮が疼く音がする。生命の始まるこの海という場所で、直接彼に生命の素を与えてほしい。さっき感じた嫌な予感を、強い刺激と快楽で打ち砕きたかった。
しかし彼は、達する前に私から手を離した。
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